久しぶりにコンサートホールで演奏して来ました。 コンサートホールはその空間が楽器のようなもの。 自然なリバーブを作り出す構造になっています。 電気による増幅ではない柔らかい音色を味わえます。 あの残響の感じはやはり特別だと思います。 耳ではなく身体に残る、そんな感覚。 私個人的には電気による増幅も大好きです。 エレキギターは素晴らしい楽器ですしね。 ノイズとの格闘になるところが悩ましいところではありますが。 ドラムの音作りも生で聴かせるかマイクに乗せるかで根本的に考え方は変わります。 生音で行く場合は基本的に倍音は豊かな方がいいと思います。 鳴り過ぎの部分をカットしなければならない場合はもちろんあります。 反対にマイクに乗せる場合はすっきりとした音の方がいいと思います。 録音の時は特に後で加工しやすいからです。 このあたりのことがわかっていなくて失敗したこともあります。 録音すると"倍音有り過ぎの音"は使いづらいんですよね。 音作りは深いです。 経験から学ぶしかありません。 先日のホールでの演奏はポップス・ゲーム音楽・映画音楽・クラッシックなどバラエティ豊かなラインナップでした。 ドラム演奏をと言うことで依頼を受けました。 音源と楽譜を預かってチェックすると明らかに雰囲気の違う一曲があります。 どう考えてもドラムでは対応できない。 『ニュルンベルクのマイスタージンガーより第一幕への前奏曲』という曲です。 (スマートフォンでご覧の方へ…再生をタップした後右下にある向き合った矢印をタップすると動画を流したまま本文を読めると思います) 冒頭からアツいティンパニのロールが聞こえます。
... これどうするんやろ。 楽譜を良くみると「ティンパニの部分はバスドラか何かで...」と書き込みがあります。 いやいやいや。 これはそんな風にしのげる感じの曲調ではない。 要所要所の盛り上がりの部分でティンパニが必ず下から支えている。 最後はフォルティシモのロングロールで熱狂的に終わります。 ... ... 楽器は借りられないんやろうな。 どうしよう。 リハーサル間際になってから音源と楽譜をチェックしたので時間的な余裕もなくリハーサル当日へ。 タムでドコドコ言わせるか... 雰囲気ぶち壊しやろな.. ! そういえば昔パーカッション・アンサンブルでタムに音程を付けたことがあった。 動画を見るとティンパニは2台。 古典なのでおそらく途中でキーを変えるとかも無いはず。 タムでティンパニ...! 閃きが舞い降りました。 ピアノのアプリで音を確認しながらなんとかタムの音程を調整。 楽譜はアレンジされたものでティンパニのパート譜は書かれていません。 音源で耳コピするしかない。 生まれて初めてのティンパニの耳コピ(笑) 時間に余裕がなく終盤の音はあいまいなままリハーサルがスタート。 実は20年近くぶりのティンパニ。 しかも間に合わせの楽器。 自分一人だけ異様なテンションです。 でもリハーサルが進むに連れ思ったよりいけそうな手応えを感じられました。 無いよりずっとましな雰囲気。 やはり経験が自分を助けてくれるのだと妙な感慨が。 当日はこれ専用にティンパニ仕様のタムを用意すればさらにいいはず。 そして本番。 ホールの響きにも助けられ"らしい"感じを出せて好演のうちに終えられました。 仕事を果たせて満足でした。 ... でも音色といい音量といい、もしここに"本物"があったらさらに良かったな。 そう思いもしたりして。 やはり代用のものには限界があります。 ホールの響きが素晴らしいので余計に感じられます。 かつて打ち込んだことのある楽器。 ティンパニはオーケストラの要。 宜しければ挿入したYoutubeの動画を是非最後までご覧になってください。 素晴らしい曲の素晴らしい熱演です。
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